
パソコンを処分・譲渡する際、「データを確実に消去したい」と考える人は多いでしょう。しかし、HDDやSSDをフォーマットやゼロクリアするだけで、本当に安全なのか?
実際にHDDやSSDのフォーマットとゼロクリアを実施し、復元ソフトを使ってデータが本当に消えているのかを検証しました。
使用したツールは以下です。
- フォーマット : Windows標準のFormat機能
- ゼロクリア : Acronis True Image for Sabrent
- データ復元 : EaseUS Data Recovery Wizard Free
※Acronis True ImageのSabrent版を使用するには、SABRENT製のUSB変換アダプターや外付けケースを使用する必要があります。

💡実験結果
- HDDは、不良セクタ―がなければゼロクリア1回でもデータ復元できませんでした。
- HDDフルフォーマットでもデータ復元できませんでしたが、安全性には疑問が残るため、ゼロクリアを推奨します。
- HDDクイックフォーマットではデータ復元できてしまうため、データ消去としては利用不可。
- SSDは「Secure Erase」などが推奨されていますが、ゼロクリア1回でもデータ復元できませんでした。
- SSDの書き込み回数には制限があるため、繰り返しのゼロクリアは寿命を縮める可能性がある。
HDDやSSDをフォーマットやゼロクリアしただけで、本当に安全にデータを消去できるのか? その実証結果を詳しくご紹介します。
フォーマットとゼロクリアの違い
HDDやSSDのデータを初期化する方法として、「フォーマット」と「ゼロクリア」がありますが、これらは目的や効果が異なります。それぞれの違いを説明します。
フォーマットとは?
フォーマットには 「クイックフォーマット」 と 「フルフォーマット」 の2種類があります。データの整理やファイルシステムの設定を目的として実施します。
① クイックフォーマット
- 簡単にいうと、ファイルの目次だけを削除する作業。
- データ自体はそのまま残っているので、復元ソフトを使うとデータを元に戻せる場合が多い。
② フルフォーマット
- クイックフォーマットとは違い、ディスク全体をスキャンし、不良セクターをチェックする。
- データ領域を「0」で上書きするため、基本的に復元は困難。
- 不良セクターがあると上書きされないデータが残る可能性がある。
ゼロクリアとは?
フォーマットとは異なり、データの痕跡を完全に消すことが目的となります。
※ゼロで上書き以外の消去方法もありますが、今回はゼロクリアに焦点を当てた内容にしています。
- ディスク全体を「0」で上書きする。
- 1回のゼロクリアでデータ復元はほぼ不可能だが、不良セクターがあるとデータが残る可能性がある。
- DoD方式(3回以上の上書き消去) を実施すると、さらに安全性が増す。
ゼロクリアとフォーマットの違いを比較!
項目 | クイックフォーマット | フルフォーマット | ゼロクリア |
目的 | 領域の再利用 | 領域の再利用 | データの完全消去 |
データ削除の仕組み | 目次(管理情報)のみ削除 | ディスクのスキャンとデータ領域を「0」にする | すべてのデータを「0」で上書き |
復元の可能性 | 高い(簡単に復元できる) | ほぼ復元不可 | ほぼ復元不可 |
処理速度 | 速い | 遅い | 遅い |
不良セクターのチェック | なし | あり | なし |
セキュリティレベル | 低い | 中程度 | 高い |
安全にデータを消すなら「ゼロクリア」
- フォーマットはデータの整理やディスクの初期化には有効だが、消去には適していない。
- フルフォーマットはデータをゼロ埋めしているが、目的は「領域の再利用」であり、完全なデータ消去が保証されるわけではない。
- データを確実に消去したい場合は、専用ソフトでのゼロクリアなどを実施することが重要。
- ただし、不良セクターがある場合、どの方法を使ってもそこにデータが残る可能性があるため、確実に消去したい場合は物理破壊が最も安全。

検証対象のHDD・SSDとゼロクリアの結果
今回検証したHDD・SSDは以下の6台です。
ストレージ | 容量 | 使用容量 | 状態 | ゼロクリア後の復元結果 |
SSD | 512GB | 100GB | 正常 | 復元不可 |
SSD | 120GB | 40GB | 正常 | 復元不可 |
HDD | 1TB | 70GB | 正常 | 復元不可 |
HDD | 500GB | 100GB | 不良 | 復元可能 |
HDD | 500GB | 100GB | 不良 | 復元不可 |
HDD | 320GB | 80GB | 正常 | 復元不可 |
この検証結果から、HDDでは不良セクターがあるとゼロクリアしてもデータが消えない可能性があることがわかりました。
なお、不良セクタ―があるHDDに2回目のゼロクリアを実施すると、復元可能なデータが検出されなくなりました。
ゼロクリア1回実施した後、実際に復元できたのが以下の設定ファイル(INIファイル)になります。ファイルの中身も確認できました。

2回目のデータ消去で復元できなくなったため、DoD方式(3回以上の上書き)ならさらに安全性が高まると考えられます。
ただし、今回は偶然にも2回目のゼロクリアでデータが削除されましたが、不良セクタ―にアクセスできず、消去もされない場合も考えられます。HDD不良が疑われる場合のデータ消去は、物理破壊が安全ですね。
一方、SSDについてはゼロクリア後に復元ソフトでスキャンした結果、復元可能なデータは検出されませんでした。
SSDは書き込み回数に限りがあるため、ゼロクリアを行うと寿命を縮める可能性があります。そのため、SSDのデータ消去方法としては最適とはいえません。
ただし、一般的な利用環境でのデータ消去であれば、ゼロクリアも選択肢の一つとして考えられます。
次に、ゼロクリアで消去したHDDにバックアップしていたデータを戻して、フォーマットで消去されるか実験しました。結果は以下の通りです。
- クイックフォーマットでは、ファイルや階層などを含め、何十万件というファイルが検知されました。
- フルフォーマットでは、ファイル名すら検知できず、データ復元できませんでした。

クイックフォーマットは、データがほとんど消えないので危険です。
フルフォーマットではデータ復元はできませんでしたが、不良セクターがある場合は完全な消去が保証されるわけではありません。
HDDとSSDのデータ消去方法
HDDとSSDは、ストレージ自体の構造も違いますし、データの保存方法も異なります。それぞれ安全にデータを消去する方法について説明します。
HDDを安全に消去する方法
- ゼロクリアを2回以上実施する(不良セクターがない場合は1回で十分)
- DoD方式(3回以上の上書き消去)を採用する
- 復元ソフトでデータが残っていないか確認する
- 完全消去が不安なら物理破壊する(プラッタに傷をつける)
HDDの物理破壊手順
HDDを確実に破壊するためには、プラッタ(円盤)を傷つけることが重要です。
- 🔧 手順
- HDDを固定する
- 外部からプラッタの中心を確認
- プラッタの中心から数センチ離れた場所にドリルなどで複数の穴を開ける
この方法を実施することで、HDDのデータが物理的に読み取れなくなります。

ポイント
- ドリルで貫通させるのは、意外と大変。
- 2.5インチHDDのプラッタはガラス製のことが多く、割れることで破壊が確認できます。
- プラッタの割れた破片でケガをしないよう、穴をセロハンテープなどで塞ぐと良いでしょう。
SSDを安全に消去する方法
- Secure EraseやSanitizeを使用する(各SSDメーカーの専用ツール)
- ゼロクリア後、復元ソフトでスキャンして確認する
- 物理破壊が最も確実な方法(SSDチップの破壊)
SSDの物理破壊手順
SSDのデータを確実に消去するためには、基板のメモリチップに直接ダメージを与える必要があります。
- 🔧 手順
- SSDの外装カバーを外す(ネジを外す)
- 内部基板にあるすべてのメモリチップをドリルで穴を開けるか、ハンマーなどで破壊する
HDDとは異なり、SSDは内部のチップがデータを保持するため、プラッタのように傷をつけるだけでは不十分です。
メモリチップ自体を破壊することで、データを完全に消去できます。
安全なHDD・SSDの処分方法
HDDやSSDの処分方法は、大きく分けて以下の3つの方法があります。
方法 | メリット | デメリット |
買取業者に売る(リサイクル) | ・お金になる ・環境に優しい | ・データ消去を確実にしないと情報流出のリスクあり |
自治体の回収サービスを利用する | ・無料または安価で処分可能 | ・自治体によって対応が異なる ・データ消去を確実にしないと情報流出のリスクあり |
物理破壊後に燃えないゴミとして捨てる | ・手軽に処分できる | ・自治体によって処分方法が異なる |
処分時の注意点
データ消去を実施せずに処分すると、情報流出のリスクがあるため、必ずゼロクリアや物理破壊をしましょう。
- 大量に処分する場合は、リサイクル業者に依頼する方が効率的です。
- 自治体ごとにパソコン自体やHDD、SSDの処分方法が異なるため、事前に確認する。
HDD・SSDのデータ消去に使用できるツール
安全にデータを消去するために、以下のツールを利用できます。
- アイ・オー・データ DiskRefresher4 SE(HDD/SSD対応)
- Acronis True Image(HDD/SSD対応)
- 各SSDメーカー提供のSecure Eraseツール(SSD専用)
- MiniTool Partition Wizard(データ抹消を無料で利用可能)
データ復元の可否をチェックするには、以下のツールが利用可能です。
- EaseUS Data Recoveryで消去後のスキャンを実施する(スキャンだけなら無料で利用可能)
- MiniTool Partition Wizardで消去後のスキャンを実施する(スキャンだけなら無料で利用可能)
- Recuvaで消去後のスキャンを実施する(無料で可能)
まとめ
今回の検証でわかったことは以下の通りです。
- HDDの不良セクターがある場合、データが消えない可能性がある
- SSDはゼロクリアのみでデータが完全に消えた
- HDDはDoD方式の3回以上の上書きが推奨される
- データが完全に消えたか不安なら復元ソフトでスキャンする
- 物理破壊が最も確実なデータ消去方法である
HDDやSSDを安全に処分するためには、適切なデータ消去方法を選ぶことが重要です。
また、今回のように実際に消去後のデータが復元できるかを確認することで、安全性をより高めることができます。
クイックフォーマットを実施することで、「誰でも簡単に見られる状態」は防げますが、データ自体は消えていません。
復元ソフトを使えば簡単に復元できてしまうため、情報流出のリスクをゼロにはできません。
確実なデータ消去を行うには、ゼロクリアまたは物理破壊が必須です。
パソコン本体やHDD、SSDを手放す際は、今回紹介した方法で確実にデータを消去し、個人情報を守りましょう。